Milliontown: Frost*


2006
Milliontown: Frost*
イギリスのシンフォニック/プログレッシヴロックバンド、フロストの1st

英クリスマス・チャートで1位をとった楽曲を提供するなどしている売れっ子作曲家/プロデューサー、ジェレミー・ゴドフレイ(Jeremy Godfrey)が「プログレがやりたい!」という思いからKinoやIQのメンバーに声をかけ、スタートしたバンド。

固定化されてしまった「プログレっぽさ」の中に、メロントロンとか湿っぽい歌い方やメロディ、大げさな盛り上がり方とかがあると思う。そういう要素は「あぁ、プログレだなぁ」と思えたり、それで大作を聴かされたりすると感動するものだけど、僕のようなピチピチの若者の感性だとたまに「古臭い」と思ってしまうこともあります。でもFrost*ではそんなことは全く感じませんでした。むしろ、未来的だと思った。その要因はなんといっても中心人物であるJ・ゴドフレイでしょう。
上にも書いた通り、ジェレミーはポップス界で活躍してる人物ですが、やっぱりポップス畑の人のセンスは凄いですね。ヒットチャートにランクインしてそうなキャッチーなメロディで次々と曲が展開していくので、曲が始まるとグイグイと惹きつけられてしまいます。
サウンドプロダクションも現代的かつ素晴らしく、繊細さとダイナミズムを両立していると思います。ジェレミー以外のメンバーも文句なしの働きっぷり。特に、gt.&vo.のジョン・ミッチェルのハスキーで男らしい歌声が曲をさらにドラマチックに盛り上げている。

アルバムはまずインスト曲"Hyperventilate"で幕を開けますが、この曲が本当にカッコイイ!それだけでご飯三杯はいけそうな綺麗なピアノで始まり、一気に他のパートが加わり一気にヘヴィな展開へ。その後もさらりとくり出される変拍子や転調で魅せてくれる名インストです。#2の"No Me No You"はハードでダイナミックなボーカルと展開が良い。#3、#4はプログレとして聴くにはどこか物足りなく感じますが、曲自体のクオリティは高いと思います。#5の"Black Light Machine"は前半のスケールの大きさを感じるメロディと、きらめいているようなギターが素晴らしい。特に、静寂のあとの泣きのギターソロにはハッと息をのませられました。後半のゴリゴリしたグルーヴの効いたド派手な展開もGood。そして、アルバムの最後を飾るタイトル曲"Milliontown"。26分もある大作ですが、この曲もやはり馴染みやすいメロディのおかげで長さはあまり感じません。どこまでも美しく、壮大に盛り上がっていき、インストパートへ。この最後のインストパートのワクワク感が半端ない!銀色の未来都市を空飛ぶ車で走っているような感覚。26分は長すぎという人もことインストパートは絶対に聴くべし。

と、まぁグダグダな感じになりましたが、メロディ有り、変態っぽさ有りと、馴染みやすい音楽が好きな人にも、ちょっと変わった音楽が好きな人にもオススメできる名盤だと思います。

余談だけど、このバンドの曲って冬に合うと思う。綺麗な音作りとか、ちょっと切ない感じのメロディとか…。バンド名もそれっぽいし。まぁこれから本格的に夏だってこの時期に言われてもって感じですが。


【Black Light Machine】http://www.youtube.com/watch?v=FPlqVwjDfUw&feature=related

【MilliontownのインストパートをBGMに使った動画】http://www.youtube.com/watch?v=zl31DZGLIaI