【斬って斬って斬りまくれ!!!】十三人の刺客


【あらすじ】
明石藩江戸家老間宮が藩主・松平斉韶を非難する訴状を遺し自決を遂げた。これにより近々老中に就任予定の斉韶の暴虐ぶりが明らかとなり、事を重く見た老中・土井は斉韶の暗殺を旗本・島田新左衛門に依頼する。勤交代の道中の斉韶を討つべく、島田のもとに集まった刺客達は決戦の場、落合へ。やがて斉韶の一団が落合に現れるが、計略により分散させたと思っていたその軍勢は70という予想をはるかに上回り、200を超えていた。島田のかつての同門で斉韶の忠臣、鬼頭半兵衛が計略に気づき、行軍を遅らせることで軍勢を再集結させていたのだ。13対200、刺客達が一世一代の大博打に打ってでようとしていた。


「映画黄金時代の熱を表現したい」、「ヒットしそうな映画ばかり作る傾向に逆らいたい」とい三池監督の言葉通りの、斬ってっ斬って斬りまくりの堂々の痛快時代劇でした!思わずグイグイとのめりこんで行ってしまうような気迫、緊張感、雰囲気、人物、どれをとっても素晴らしかったです。特に強烈な印象をもつシーンの連続で、長さを全く感じないテンポの良さは素晴らしかったと思います。まず上映開始直後の切腹シーンがいきなり強烈。顔をアップで写しているだけなのですが苦痛に歪む顔とブチブチという音に思わず目をそむけたくなりました。その後のだるま娘の叫びには本当に目をそむけてしまいました。ここまでほんの10分くらいだったと思うのですが僕は完全に映画の不穏な雰囲気にのまれてしまいました。刺客が集まっていき、いよいよ最終決戦だ、というところまでのワクワク感も凄かった。「迎え火焚いて待っててくれ」、「預かった命、使い捨てに致す」、落合へと雨の中を馬で駆けていく刺客たち、などなど…熱い名シーン、名セリフの連続です。その後「みなごろし」の一筆を掲げ、「斬って斬って斬りまくれー!!!」で壮絶な合戦シーンへ、の流れは鳥肌ものでした。
キャスティングもものすごくマッチしていて、特に斉韶の稲垣吾郎は怖いほどに合っていました。あの子供のような残酷さと無邪気さはこの人しか出せないというか。ほとんど予備知識無しで観に行ったもので、あまりにも役にはまっていたのでスタッフロールで名前が出るまで「あれ?ゴロちゃん?ほんとに?」って感じでした。いや〜、あっぱれ!です。
でも不安が全く無いかと言うと、そういうわけでもなく。個人的には刺客側の人物に印象が薄い人がいたのが残念でした。この映画に限らず、泥まみれ血まみれになった人間が大勢入り乱れる戦闘シーンがある映画ではどうしても起こってしまうことだと思うんですが、合戦シーンでは刺客側の人物の見分けがつかないってのがかなりありました。「小細工は終わりだ!」って正々堂々と斬りあうのは結構なことなんですが、弓の名手や爆薬使いの人もさっさと斬り合いに行ってしまうので、設定を活かした見せ場が無いというか…。せっかくキャストがマッチしてるんだからもう少し一人一人を目立たしてもよかったと思います。一人一人掘り下げてたら上映時間が凄いことになるので、それを考えれば頑張ってたとは思いますが…。
しかし、そういうことも「もういいじゃん!」と思ってしまうような、単純なカッコよさ面白さを感じた作品でした。